アラス・ペダン第1回公演
「明解!寄生虫学入門」
『あらすじ』
狗耳島という島で、いろんな人が恋したりご飯を食べたり
喧嘩したり仲直りしたり泣いたり笑ったり盛り上がったりへこんだりして
やっぱり恋しながら割りと普通に生活していたところ、
突然寄生虫が巨大化して大変なことになるお話。
『明解!寄生虫学入門に出演した主な寄生虫達の紹介』
日本住血吸虫 【Schistosoma japonicum
広島の片山病、甲府の水腫張満などの風土病の原因の寄生虫。
これらの病気の末期症状では腹水がたまり、腹が妊婦のように膨れ上がり最終的には衰弱して死亡する。
長い間原因が分からず奇病として恐れられていて、流行地へ嫁に行く時は経かたびら(死者に着せる白装束)や棺桶を持っていけとと言うような歌が歌われるほどであった。
明治の末、日本人の研究者たちによってこの病気の研究が進み、原因は新種の寄生虫によるものだと分かると感染源や生態や撲滅方法なども次々と解明されていった。これは同時に世界中に蔓延する住血吸虫症の研究の先鞭をつけることになった。当時、日本人だけの手により一つの病気の解明が行われたことは初めてであり、日本の医学史上の快挙でもあった。
日本住血吸虫はミヤイリガイという小さな巻貝の中で成長し、人間に感染できるようになると貝から出て水の中を泳ぎ皮膚から人体内に入る。
そのため日本住血吸虫症の撲滅にはミヤイリガイを根絶することが最も効果的であり、すなわち日本住血吸虫症の克服とは、日本住血吸虫のみならずミヤイリガイも絶滅に追い込むということであった。
日本では1978年を最期に日本住血吸虫の撲滅宣言が出されている。
マラリア原虫 【Plasmodium sp.
現在、地球上でもっとも死亡者の多い病気は何か?それはガンでも脳卒中でもHIVでもなく「マラリア」である。
およそ2億6千万人が感染し、死亡者は毎年200万人にも上り、WHOでも撲滅に力を注いでいるが一向にその感染者数は減る傾向にない。
マラリア(Malaria)は悪い(mal)+空気(aria)を意味し、最初は悪い空気による感染と考えられていたが、19世紀末に蚊(ハマダラカ)により媒介される寄生虫症であることが解明された。マラリア原虫はそのマラリアの原因となる寄生虫である。
最大の流行地はアフリカ熱帯地方であるが、日本でも平清盛がマラリアによって死亡したといわれているようにかっては流行地であった。(当時は瘧とか童病みと呼ばれた。)しかし、経済発展に伴い媒介する蚊が駆逐され1959年を最期に撲滅されている。
現在は流行地への旅行によりマラリアに感染することが多いため、注意が必要である。
マラリア原虫はこのページに記載している他の寄生虫とは異なり、単細胞性でこのような単細胞の寄生虫を原虫と呼ぶ。(対して、多細胞の寄生虫を蠕虫と呼ぶ。)
現実ではかくも恐ろしいマラリア原虫であったが「明解!寄生虫学入門」では、巨大化ゆえにただのスライム状のねばねばした物体に成り下がっていた。
触るとプルプルしてて、実はちょっと気持ちが良い。稽古場ではみんなこのマラリア原虫で遊んでいた

実際に使われた肝蛙。
タバコと比較しています。
肝蛭 【Fasciola gigantica
世界各地に分布し、ウシやヒツジなどの家畜の胆管に寄生して大きな病害を与える。
日本の肝蛭はヨーロッパに分布するものよりも体長が2〜3倍ほど大きく(5〜6cm)、巨大肝蛭と呼ばれる。
ウシの消化管や肝臓の生食により、ヒトにも感染する。症状は上腹部痛や発熱などを起こすが、死に至ることはほとんどない。
ちなみに肝蛭の虫卵は150〜190μmで、寄生虫の卵の中で最も大きい。
「明解!寄生虫学入門」では一番最初に巨大化して登場した寄生虫だ。
現れるや否や重要登場人物をいきなり捕食する容赦のなさはとても好きだ。

実際に使われたヒト回虫
タバコと比較しています。
ヒト回虫 【Ascaris lumbricoides
第二次世界大戦中・戦後には日本国民の80%以上が感染していて結核と並び国民病と言われたが、経済の発展に伴い減少し、現在ではほとんど感染者がいなくなった。作物の肥料に人糞を使わず化学肥料を使うようになったことや下水道の整備が感染率減少の直接の原因であろう。
体長30cmもある大型の線虫で紀元前からその存在が確認されてきた非常にポピュラーな寄生虫である。通常、小腸に寄生する。その場合大した症状は起こらず駆虫薬の投与で治療できるが、間違って胃や肝臓などの器官に入る(迷入という)と、激しい腹痛を起こし開腹手術をしなければならない場合がある。
ヒト回虫のように、宿主(この場合ヒト)とよく適応している寄生虫は正しく寄生すれば、ほとんど病害がないことが多い。なぜならば、宿主に害を成し衰弱させることは、自分の首をしめることにもなるからである。宿主に大きな病害を与える寄生虫は、その宿主が最終的な宿主でない場合や、まだうまく適応できていない場合が多い。
「明解!寄生虫学入門」においては最も巨大に成長し(推定20m)、雰囲気的にはラスボスみたいな感じで登場した。
蠢く巨大ヒト回虫は多くのお客さんに戦慄を与えたようだ

研究者、エキノコックス捕獲!!
エキノコックス(多包条虫) 【Echinococcus granulosus
成虫で3〜6mm程度の小さな条虫(サナダムシやこのページで紹介している無鉤条虫や有鉤条虫の仲間)である。
成虫はキツネやイヌに寄生する。キツネの糞とともに体外に排出された寄生虫卵は、ネズミに経口感染しその体内で孵化し、成長する。
エキノコックスの幼虫はカリフラワー状に膨れ上がり、ネズミの肝臓を圧迫し、ネズミを衰弱させる。衰弱したネズミはキツネなどに捕食され、かくして再び元の寄生先へ戻ってくる。ネズミにしてみれば散々な話だがこのような方法を取ることでエキノコックスは効率よく移動し生活しているのである。
エキノコックスはヒトにも感染する。この場合、エキノコックスにとってヒトのポジションはネズミと同じで、キツネに捕食してもらうため衰弱させようとする。感染後、数十年の潜伏期間を経て肝臓ガンに似た症状を引き起こし、脳や肺にも転移することがあり、放置すれば死に至る。治療は感染部位を外科的に取り除く他ない。
1936年礼文島出身の女性に感染が報告されて以来、現在では北海道全域から感染が報告されている恐ろしい寄生虫症である。
予防はキタキツネにむやみに触れないこと、屋外から帰ったらよく手洗いすることが重要である。
ちなみにこの寄生虫は今回の「明解!寄生虫学入門」のアンケートにおいて一番人気の寄生虫であった。
確かに形態はどことなく愛嬌がある。

無鉤条虫

有鉤条虫
無鉤条虫 【Taeniarhynchus saginatus
有鉤条虫 【Taenia solium

いわゆるサナダムシの仲間で、有鉤条虫をカギサナダ、無鉤条虫をカギナシサナダということもある。その名の通り頭節に鉤があるか無いかで区別できる。
体調は3m前後でかなり巨大だが、成虫の寄生による症状はほとんど無い。ただし、有鉤条虫の卵は人体内で孵化してしまうことがあり、そうなるとその幼虫は体の様々な部位に移動し8mm程度の長楕円形の嚢虫になる。これを有鉤嚢虫症と言う。嚢虫が皮下に出来た場合は小さな瘤ができるぐらいだが、目や脊髄や脳などの重要な部位にできると失明、意識障害、運動障害など非常に危険な症状を起こす。無鉤条虫ではこのようなことは起こらない。
この二つの寄生虫の覚え方として「ないのはあって、あるのはない。無いのはサギだ」というのがある。角のない豚から感染するのは有鉤条虫、角のある牛から感染するのは無鉤条虫、そして無鉤条虫の学名はサギナータス(saginatus)であるというわけだ。感染は牛、豚を生食すると起こるので、肉はきちんと火を通すことが感染を防ぐ重要な手段である。
「明解!寄生虫学入門」では、なんと無鉤条虫のホルマリン漬けのサンプルが登場した。白くて細長くて、まるでかんぴょうのようであった
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